半農半菓
自然農を楽にするポイント
2008年10月21日
7月半ばの稲の足もとの状態
7月半ばの稲の足もとの状態
さて、今日は、
自然農をやってるけどもうちょっと楽にやりたい人、
もうちょっと楽にやれたらやりたい人のために、ちょっと詳しく。

自然農はだれでも簡単にできるが、
手をかけただけの実りを手にできるかどうかは、
田植え後一か月で決まる。
この間に草に負けるか、負けないかが分かれ目だということ。

だから負けそうになったら、草刈に入って手を貸してやるわけだが。
この真夏の草刈が、きつくて、自然農は大変だと、
そして、草に負けて収量が少なく、
自然農は、草だらけで収量が少ないとくじける人も多い。

でも、僕はいいたい、
自然農はポイントがわかれば、楽にできる。
そして驚くほど、大きな株になる。

だから、自然農を楽にするポイント。

それは、田植え前に畑草がいかに背が高く旺盛に生えているか、という点。
ちなみに畑草という草はないのであしからず。
畑に生えるような水を嫌う草、一般的にはイネ科、ムギ科、マメ科の一年草のことだ。
これらが旺盛に背が高く生えているような状態なら、ベストだということだ。
それら冬の畑草が、ひざ上、あるいは腰くらいあるぐらい茂っていると、
まず、田植え時期、稲と競合する草が、芽吹きにくい。
そして、それらを押し倒して、あるいは刈り敷いて、苗を植えるわけだが、
そのとき、地面を覆う草が多ければ多いほど、物理的に下から草が芽吹きにくい。
紙マルチ農法というのがあるが、
いわば、草マルチ農法だ。
それも分厚い草マルチ。
そして、そこに生えていた草が水を好む草だったら、
そのうち再生して稲と競合するが、
(だって田植え後は水を張るから)
水を嫌う畑草だったら、水を張れば枯れていくか弱っていく一方で、稲と競合しない。
そのようにして、厚い冬春の草の亡骸が、草を押さえる。

そういう田ならいうことはないが、
そう条件のいい田ばかりではない。
水はけの悪いところは、畑草が生えても背丈が低いし、
畑草でなく、水を好む草が生えやすい。
そうすると、草が少なく薄い草マルチにしかならず、
水を入れれば元気になる草がぼうぼう生えてくる。
だから、人為的に、いい状態の田にしてやる。
つまり、溝を掘って、水はけをよくしてやるのだ。
長々と書いてきたが、結局は一言、「溝を掘る」ということ。
水はけの悪い田なら悪いところから排水口まで、溝をほっておく。
深けりゃ深いほどいいが、普通は20センチも深けりゃ充分だろう。
そうすると、水はけがよくなって、水を嫌う畑草が冬の間によく生える。
田植えしたとき、水で弱っていく草のマルチが厚く出来上がる。
というわけ(^^)

それだけでもかなり草を押さえられるが、
さらに完全に草を押さえたいという人は、
つまり、真夏の草刈りを完全にさぼりたい人は、
田植え後2〜3週間は、水を深めに張った状態をキープしてやる。
これが2番目のポイント。
(ただし、これは川口さんのいう自然農からすれば、ちょっと邪道かも(^^;))

深水をキープしておくと、深水の下の草マルチの草たちが嫌気型の発酵を起こす。
するとどうやら、発芽を抑制する働きがあるようだ。
分厚い草マルチの間隙をぬって発芽しようとする芽が抑制され、
さらにすでに発芽している草の小さな芽なら、ヒエでもとけて消えてしまう。
ただし、水面より上にすでに出ているものは生き残るけど。

有機農業をしてる人たちの中で、除草剤の代わりに、米ぬかを使う米ぬか除草というのがあるが、あれと同じ理屈だ。
あれは実は、米ぬかでなくてもいい。
有機物なら、なんでも同様の効果が表れるようだ。
福岡正信さんの直播栽培のクローバーも同様の効果をつくる。

有機物が嫌気型の発酵を起こしたときに、とろとろぬるぬるの層ができる。
このぬるぬる層を乾かさない限り、発芽抑制効果が続く。
だけど、水のためっぱなしは稲の根にもよくないので、
適度に水を抜いた状態もつくってやる。
ぬるぬる層が乾いてパリパリにならないうちに、また水を入れてやる。
今度は浅くていい。
ぬるぬる層を保ってやれば、秋まで完全に草がない稲だけの状態にもできるが、
それでは、自然農ではない。
貧相な生態系の米製造工場になってしまう。
だから、稲が草に負けると困る時期だけ草を抑えたら、
あとはぬるぬる層を乾かして、効果を解いてやる。
あとは、程よく水を入れたり、抜いたり。
(というか、水を入れなければ、不耕起田の場合、一日もしくは数日で水が抜けるが。)

ぬるぬる効果を解くと、草が生え始める。
だけど、稲は旺盛に株別れして、もう草に負けることはない。
稲と競合する草の生え始める時期は過ぎているので、そう邪魔になる草は生えない。
足元には、稲刈りのとき、邪魔にならない程度の草の層。
草の中は、たくさんの虫たちの活動の場。
適度な草の絨毯の中での、稲刈りは気持ちイイ。

とにかく水はけの悪い田んぼだったら、
溝を掘って、水はけを良くしてやること。
そして水がたまらない田んぼだったら、
しっかり畦塗りして、水がたまるようにしてやること。
そうして、水はけよく、水もためれる状態にしてやることが、
大きなポイントのようだ。

こうして、今10年目を迎える自然農の田では、
そう草刈りに手はかからない。

自然農をもっと楽にやりたい、
自然農で、もっとしっかりと実りを実感したい人は、
参考にしてみてください。


ちなみに、一般の人は、
自然農と自然農法を混同されるようです。
とくに去年あたりからテレビで紹介された岩澤さんの自然耕と。
冬に水を溜めておいて、水鳥が飛んでくるようになったっていう。
あのやり方は、冬、田んぼを湿田状態にして、湿地系の生態系をつくることを利用しているもので、
自然農(大下流)の場合は、冬、乾田状態にして、畑の生態系をつくることを利用しているので、根本的に違うのです。
どちらがいいということではなく、
やり方がちがうと、いろんなことがことごとく違ってくるので、初心者の方は混同されないほうがいいと思います。
やり方が違えば、どんなその道のプロのいうことだって、あてになりません。
いろんな意見は尊重した上で、
田に立ち、
稲と対話し、
草をみつめ、
土にふれる。
百人いれば、百の米つくりが生まれます。

米つくりは、やり方も様々、
田んぼによっても様々。
年によっても、様々。
奥深くって、
ほんとにおもしろいですよ。

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