半農半菓
害虫、雑草、そしてテロ
2003年12月16日
とうとう日本人からも死者が出ました。
9.11から2年。アフガン、イラク・・・・。
「テロとの戦い」「テロの撲滅」とますます耳にするようになっています。
しかし、その結果、憎しみは憎しみの連鎖をよび、世界はますます悲しみと恐怖へと引きずり込まれているかのように見えます。

僕は米も作っているのですが、テロに対する考え方と、農業での虫や草、病気に対する考え方はよく似ているような気がします。

僕の田んぼは、耕しもせず、肥料もやらず、いろんな草が生えたまま、つまり自然のまんまの田んぼなのですが、ここにはたくさんの虫、草、微生物が住んでいます。一般的にいえば、「雑草」だらけ。その中には「害虫」と呼ばれる虫も見かけます。病気の稲を見ることもあります。
でもそれらが大量発生したことはただの一度もありません。
虫の世界、草の世界、微生物の世界のバランスがとれているからです。
しかし一般的な農業では、それらは「害虫」「雑草」「病原菌」と名づけられ、「悪」とみて、退治されます。化学肥料や薬によってバランスをくずした土は、さらなる病気を招きます。
そういうことが繰り返される内、草も虫も菌も抵抗力を強め、新たな種類のものが生まれます。そしてもっと強い薬が必要になります。
このいたちごっこ、負の連鎖・・・田んぼの中だけでなく、今世界中で見られるように思います。
院内感染、O157、・・・そしてテロ。
院内感染の対策費はいまや、一兆5000億円。
医療費の負担の増加が、私たちの家計を圧迫していることは、いまや誰でも知っています。
そして世界第2位の日本の軍事予算は、テロ対策のためさらに膨らみ続けています。
このまま私たちがいたちごっこをやめなければ、行き着く先は、
経済の破綻か、未知の病気の大発生か、それとも・・・。

除草剤が効かない草も、院内感染もO157も・・・そしてテロリストも、
どれも普通の菌や細胞そして普通の人が、変異したもの。
本当はただの菌だったり、ただの人だったのです。
田んぼで病気が大発生するのは、菌がいたからではなく、土壌の「バランス」がくずれているからです。
人が病気になるのも、体と心、環境の「バランス」がくずれたときになるのかもしれません。
また、一方では貧困と飢えで苦しみ、一方では富を搾取、独占しているこの世界の経済や食料の「バランス」がくずれていることこそが、テロを生み出す土壌になっているのではないでしょうか。
何かを悪と決め付け、それを退治しようとしている間は、
いくら新しい薬をつくろうと、いくら新しい農薬をつくろうと、いくら兵器を増やそうと、
病気もテロも戦争もなくならないでしょう。
私たちが、それを生んだ土壌そのものを変えようとしない限り。

僕の田んぼは、そのための実験でもあります。
今までとは、根本的に価値観の異なった田んぼのあり方。
「バランス」のくずれてしまった土地を元にもどしながら、生きていくには・・・。
世界を変化させていくためのヒントが、この田んぼの中にあります。

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