半農半菓
添加物の話
2004年4月21日
アフリカから帰ってきた頃、食べ物を食べるとのどにピリピリ刺激を覚えることがよくあった。
最初はなにかよくわからなかったのだが、そのうちどうも農薬や添加物に反応していることに気がついた。
アフリカでは、本当に自然なものだけを口にしていたので、体がすっかりピュアになっていたんだろう。
ところが、自分の店のケーキを食べても、ピリッとくる。
あれっ?変なものを入れた覚えはない。
不思議に思って、材料を調べてみると、いろんな「カタカナ」の名前がぎっしり。
たとえば、バニラエッセンスの容器の裏に、「プロピレングリコール・・・・27%」???
本で調べてみて驚いた。
溶剤なのだが、アレルギー反応、発ガン性、いずれも高く、海外では使用禁止されているではないか。
しかも、27%ということは、1リットル瓶の4分の1は「プロピレング・・・」!!
他の材料、鳥のエサ、果物も調べてみると、そんな添加物、農薬がオンパレード。
他にも一例を挙げてみれば、スポンジケーキを泡立てるときに使う「気泡剤」。
多くのケーキ屋さんはスポンジケーキを泡立てるとき、これをちょこっと入れる。
これを使うと、量が3割は増す。
スポンジが10個取れるところが、13個以上取れるってわけ。
そして泡が死なない。
つまり誰が焼いても、失敗が無いわけだ。
そして何よりも、泡の目が細かい、口の中でとろけるようなスポンジケーキが出来上がる。
量は増える、失敗がない、おいしいとなれば、誰だって使いたくなるだろう。
しかし、これにも「プロピレングリコール」が入っていた。
「便利なもの」というものには、必ず裏がある。(と、僕は一応疑うことにしている)
日本は欧米に比べて規制がゆるく、使い放題だ。
安くできるから。量がとれるから。見た目がよくなるから。日持ちがするから。
売り手の利益が第一で、食べる人の健康は二の次。
みな危険と知らずに使っているのだから責めることはできないが、危険と知ったならばどうするだろうか。
すぐに死ぬほどの危険性はなくても、体の中にはたまっていく。
30年かけて殺すのは、殺人にはならないのだろうか。
「自分の子どもに食べさせたくないものを、人に食べさせるなんてできない。
ましてお金をいただいて・・・。」

うちの店も1年かけて、自然な材料を探し、ケーキの配合を変えていったのは、言うまでもない。
狂牛病などの問題がでてきて、はじめてエサの安全性が問われ始めているが、問題は牛だけではない。
まして、口の中に入るのは、一つの食べ物だけではない。
たとえばここにバナナケーキがあるとしよう。
そしてその上には子どもの好きなキャラクターが書かれてあるとする。
それを添加物の視点からみてみると、こうなる。
バナナにはカビが生えないようにTBZ(チア・ベンタ・ゾール)。
現在流通しているバナナのほとんどは、大規模単一栽培による病虫害の大量発生を防ぐために、大量の農薬や殺虫剤、除草剤が使われている。
さらに「見栄えのよい」きれいな一房のバナナとして店頭に出せるように、バナナの軸腐れと白カビの発生による「房落ち」を防ぐために、防腐剤、防虫剤がバナナに噴霧される。
その代表格が、「TBZ」。数ある添加物の中でも危険度の最も高いものだ。
そしてスポンジや生クリームの材料には、「プロピレングリコール」。
そしてキャラクターにはご存知「赤色××号」「青色××号」・・・。
いずれも海外では禁止されていたり、危険度の高い添加物。
理科の化学実験を思い出してほしい。
ビーカーに「TBZ」と「プロピレングリコール」と「赤色××号」を混ぜてみると、どんな化学反応が起こるんだろう。
そして世の中に出回っている何万種類の化学物質。
僕たちはビーカーの代わりに、自分の身体や子どもたちの身体で、壮大な化学反応実験をしていることになる。
しかも結果が出てくるのは、何年、何十年も後になるから、始末が悪い。
アトピー、がん、・・・・、いろんな病気が出るはずである。

うちは材料を無農薬のものや無添加のものに変えたら、材料費が倍になった。
でも売り上げも倍に。
遠方からもわざわざお客さんが来てくれる。
ありがたいことだ。
でもそのたびに思う。
どの店で買っても、安全でおいしいケーキが食べれるようになればいいなあと。

添加物・・・。
そこでできたものをそこで食べていた時代には、必要もなかったのに。
すべては・・・、安く大量につくり、遠くへきれいなまま送るために、必要になった。
みんな悪気があってしているわけではないが、
外から眺めてみると、なんとも狂気じみた世界だ。
自分の食べ物は自分でつくる。
それがすべてを解決するカギに思えるのは自分だけだろうか。
種を蒔き、芽が出て、育ち、実る。
何よりも、この生命の営みにかかわるのは、この上なく気持ちいいことだけは確かだ。

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