半農半菓
台風一過
2004年12月28日
いやあーー、すごかった。
隣の90近いおじいちゃん曰く、今回の台風18号は、過去最大にすさまじかったみたい。
うちは屋根が吹き飛びました。
茅葺きにトタンがかぶせてある屋根だったのですが、みごとに引っぺがされました。(^^)
最初は屋根のトタンが飛んでいくたびに、1枚、2枚、・・・・数えながら、外に出てはどこが飛んだか確認してたんですが、5枚まで数えたあたりでとても外に出ることもできなくなって、縁側の窓から木の葉のように舞っていくいろんなものを眺めておりました。
そうして最後には、ガラガラガッシャーーン!
目の前に大屋根2枚ぶんのトタン屋根がまるごと落ちてきました。
電線に引っかかって宙ぶらりん。
自然の力のあまりの凄まじさに、ひとり大笑いする僕でした。

台風一過、外にでてみると。
トタン屋根だけでなく、藁も一部飛んで、空がよく見えていました。
車庫のトタン屋根も丸はげ。
瓦も飛びまくってましたが、幸いほとんどが田んぼの中に落ちたので、割れていなくて、また元に戻せました。
畑、壊滅。
栗の木もほとんど折れちゃって、今年のモンブランは、いつまでやれるかなって感じです。
まあでもどれもが、落ちてきた大屋根に比べれば、かわいくみえたのは言うまでもありません。
いっそのこと、きれいに飛んでなくなってくれてれば、まだ楽だったんですが、
大屋根2面分がはずれ落ちて、途中電線に引っかかってるんですから、電線を切らないように解体するのに、一苦労、いや楽しませてもらいました。
近所の人に聞けば、トタンを葺いたのは、40年以上前とのこと。
どうりで、トタンの裏の木枠は腐ってぼろぼろでした。
よくみてみれば、茅葺きではなくて、ほとんどが麦わらでした。
そして、トタンを解体撤去して、よくよく眺めてみれば、
僕が思い描いていた茅葺き屋根の古民家そのものじゃないですか。
この家を最初に見たとき、「トタンが被せてあるんかあ、これがトタンがなくて茅葺きだったら、最高なのになあ」と思っていたことを思い出しました。
なんのことはない、理想の姿にちょっと近づいたのでした。

さて、友人のお父さんが、茅葺き職人さんだったのを思い出し、山陰からわざわざ稲刈りを中断させて見にきてもらいました。
たいして傷んだほうではないとのこと。
台風で飛んだ穴や、腐って溝みたいになっている部分を補修しておけば、まだまだ大丈夫とお墨付きをもらって、一安心。
補修の仕方と道具の作り方を簡単に教えてもらいました。

台風のおかげで、今回、茅葺きのことをいろいろ知ることができました。
僕は茅葺きの家は、それを維持するのにすごい金がかかると思ってたんです。
たくさんの職人さんの手間賃、大量の茅代。
大きい屋根になると一千万を越えると言う話も聞き覚えが・・・・。
とにかくあれは金持ちしかできんというイメージが固まっていたんですが。
でもあれも公共工事と一緒。
中間マージンが多くて、べらぼうに高くなっていることを知りました。
内緒の話ですが、ある自治体の観光スポット、古民家の里。
そこの屋根の葺き替えでの話。
そこに来ていた県外の職人さんたちの日当は5万円。
茅1束、1000円。
工期1ヶ月かけて、しかも仕事はうわべだけ整えていて、見えないところは手抜きだらけだったとのこと。
それを地元の職人さんに頼めば、日当1万5千円から2万円。
茅1束、300円。
一週間でできるそうです。
すごい違いですよね。
業者でなく、直接職人さんに頼めば、そして下手間を自分たちでやれば、もっといえば、茅も自分たちで用意すれば・・・。
考えてみれば、元来金持ちの家の屋根ではなく、庶民の家の屋根だったわけです。
高いわけはありません。
計算してみたら、茅を買ったとしても、瓦やトタンで葺き替えるよりも、はるかに安く済むことが分かりました。
しかも麦ではなくて、ちゃんとした茅で葺けば、40年はもつのです。
すべて土に返るし、断熱効果は最高だし。
唯一ひっかかっていた金額も安く済むとなれば、もう決まり。

店のインテリア用にとっておいた麦。
保管しておいた稲藁。だけじゃ足りなくて知り合いの農家から稲藁をたくさん。
葦舟を作ったときにもらってきた葦(小屋を作るはずだったが、まだだったんです)。
手に入るだけの材料をつかって、ただいま補修中。
とりあえず、材料の茅が手に入る春を待つことにしました。
台風さまさま。
また一歩、描く姿に近づきました。
春、待ちどおし、です。

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