半農半菓
今がピークオイルの真っただ中?
2008年6月10日
ガソリンがどんどん高くなってきました。
まだまだなるでしょうね。
これをきっかけに、地域自給、循環のシステムへと社会構造が変化していくのなら、いいことですが。
それを進めていかなかったら、混乱は避けられないでしょう。

ピークオイルに関する興味深い記事を紹介してもらったので、シェアします。
海外では、いろいろ社会的に議論を呼んでいるピークオイル問題ですが、
日本ではあまり耳に入りません。

ご存知のかたもあると思いますが、イラク戦争をきっかけに始まった戦争
と平和に関する翻訳情報を配信しているTUPというヤフーグ
ループからの
配信からの転送です。
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今がピークオイルの真っただ中?

TUPエッセイ
パンタ笛吹 著

2008年6月6日

日本ではガソリンの値段が1リットル170円を超えた、とネット新聞で読んだ。
ここアメリカでもガソリン価格が上がり続け、1ガロン(約3.8リットル)4ドルの時代についに突入した。
テレビニュースにチャンネルをあわせれば、ガソリンスタンドで不平不満をぶちまける人びとの映像が、繰り返し流されている。(1999年に、1ガロン1ドル以下になったこともあるガソリン価格は、2004年にはじめて2ドルを越え、2007年の11月
から、ずっと3ドル台を推移していた。)
燃料高のあおりを受け、この半年ですでにいくつかの航空会社が廃業に追い込まれた。
大手航空会社のアメリカン航空は、多くの従業員を解雇し、便数を最低限にまで減らしても原油高に追いつかないので、乗客の預け入れ荷物が一個だけでも15ドル請求することにした。
米自動車大手ゼネラル・モータースは、トラックやスポーツ用多目的車(SUV)を生産する北米4工場を閉鎖すると発表した。
大型車がガソリン価格の高騰で、急に売れなくなったからだ。
またリッター4キロしか走らないので悪名高かった「ハマー」ブランドも、身売りに出されることになった。

アラバマ州バーミングハム市では、市職員が通勤に使う車のガソリン代が高騰したのを受け、1日8時間、週5日間働いていたのを、1日10時間働く代わりに週4日間勤務すればいいという風に変更することになった。
アリゾナ州エイヴォンデール市もまた、市職員に週休3日制を採用することに決めた。
職場に通う日にちが1週間に1日減れば、それだけ通勤に使うガソリン代が節約できるからだ。

わたしの住んでいるコロラド州ボルダー市では、市内の会社で働いている人びとに、無料でバス乗り放題のカードが配られている。
車を持っていても、マイカーに乗らないで無料バス通勤する人びとが増えている。
これは道路の渋滞を解消し、二酸化炭素の削減にも役に立っている。
近所に住む友人は、冬の暖房代が耐えられないほど高くなったので、家中の壁に断熱材を入れ、窓を保温用の二重窓に取り替えた。
どうやら人間は、お金がからまないと、なかなかエコを実践しないようだ。
そういう意味では、「ガソリン高こそ地球温暖化をやわらげる救世主」だと主張する環境活動家さえいる。

では、原油価格はどこまで上がり続けるのだろうか? 
石油は限りある資源だが、いつその産出量のピークを迎えるのだろうか?
石油が枯渇し始めたら、人びとはどう対処するのだろうか? 
それらの問いの答えを探るために、ミシガン州グランドラピッド市で、5月30日から6月1日までの3日間にわたって開かれた「ピークオイルと気候変動に関する国際会議」に行ってきた。

会場では、名だたるピークオイルの専門家たちから、実際に石油枯渇後に備えて様々な準備を実践している市民活動家まで、約50人の講演やパネルディスカッションが文字通り朝から晩まで続いた。
まるで「オイル漬け」状態だ。
数年前からピークオイル説に関する翻訳をしてきたわたしでさえショックを受けるような研究発表もあり、興味深い学びの3日間だった。

学者たちの講演で、繰り返し取り上げられたキーワードが「ハバート曲線」だ。
1950年代、シェル石油研究所で働く地球物理学者、キング・ハバートは、「米国の石油生産は1970年にピークを迎え、それ以降は減少の一途をたどる」と予測した。
当時は大きな反論にあったそうだが、実際にアメリカの石油生産はハバートの予測どおり、1970年にピークを迎えた。
いまでは世界の石油産出量のわずか2%にまで落ち込み、米国はその消費量の大部分を輸入に頼っている。

キング・ハバートはまた、今から50年ほど前に、「世界の石油生産のピークは2000年頃におとずれる」と予測した。
今回の会議で、学者たちに共通した認識は、「石油のピークは2005年から2010年にかけて起きている」というものだった。
つまり今この時が、人類が初めて直面するピークオイルの真っただ中だというのである。実際、2005年に日産8千5百万バレルを記録した世界の産油量は、それ以降、ほぼ同じレベルで推 移している。

新しい油田の発見は1965年にピークを迎えており、それ以降は年々、新油田を見つけるのが難しくなっている。
特に近ごろ発見されてニュースになる油田のほとんどは、海底深い地中に埋蔵されていて届きにくかったり、不純物が混じっていて精製に大量のエネルギーを要するものが多い。
掘れば簡単に石油が吹き出てくるイージーオイルの時代は過ぎ、産出にさまざまな障害をかかえるタフオイルの時代に入ったという。

1980年代半ばから90年代まで主な石油の輸出国だったイギリスは、1999年に最盛期を過ぎ、その後は急速に生産量が落ち込んだ。
2006年にはロイヤル・ダッチ・シェルやBPなどのメジャー石油会社が、枯渇しかけている北海油田から撤退に踏み切っている。

ノルウェーもすでにピークを過ぎ、最近は年6%の割合で産出量が 減少している。
メキシコの石油産出量の減少はもっと著しく、毎年約10%ずつ減っている。
数年前までは、石油はあと50年はだいじょうぶと豪語していた産油国も、今ではその産出量に限界があることを認め始めた。
大手のシェル石油でさえ、石油産出のピークが2025年前後にくるだろうとしている。

5月28日には、石油輸出国のインドネシアが、まもなくOPEC(石油輸出国機構)から脱退すると発表した。
油田が枯渇し始め、石油を国内消費にまわすのに手一杯で、輸出する余裕がなくなったからだという。
いま期待されているANWR(北極圏野生動物保護区)の石油資源にしても、もし米議会が開発を許可して石油生産を始めても、米国の石油消費量の4年分しか埋蔵量がないことが分かっている。

古代の植物が堆積されて石油になるのに、約1億5千万年がかかったという。
それをわたしたち人間は、わずか200年たらずの間に使ってしまおうというのだから、人類とは困った生き物である。
産業革命から今日まで、人間はこの「燃える不思議な液体」のご利益に頼り続け、すでに9千億(900000000000)バレルの石油を燃やしてしまった。

どんな名山でも、頂上をすぎればあとは下り坂。いよいよ「終わりの始まり」がやってくる。
いま、約125ドル/バレルの原油価格が、来年には200ドル/バレル以上、そして10年後には1000ドル/バレルにはね上がってもおかしくないという。
そうなれば、ガソリンスタンドで10リットル買うだけでも1万円札が軽く飛んでいく。

石油生産が需要を満たせなくなれば、世界経済は大恐慌を迎える可能性が高い、と警鐘を鳴らす学者もいた。
太陽光発電にしても風力発電にしても、技術ははるかに進歩しているが、石油の代わりにはなり得ないという。
また、石油枯渇を救う「奇跡の大発明」を期待するのも、宝くじで2億円が当たりますようにと願うのと同じことだともいう。

エコロジストがいう「持続可能な社会」だけではなく、ピークオイルを「生き延びることが可能な社会」にするための準備を、すでに始めているコミュニティーが多くあることもこの会議で知った。
パーマカルチャー農園やエコビレッジを実践している人びとが、世界中に増えているという。
昔懐かしい有名なヒッピーコミューン、テネシー・ファームの代表も会場に来て講演をした。
60年代のフラワーチルドレンが掲げた大地に還る生活様式が、新しい形で脱石油社会のモデルになっている。

「芝生の庭をどうすれば野菜畑に転換できるか」とか、「食糧を半年分、家庭に備蓄するための倉庫の作り方」とかに話題が進むと、いつかどこかで聞いたことがあるなあと、デジャヴュー(既視感)におそわれた。
そう、2000年を迎える直前のY2K(コンピュータ誤作動問題)の騒ぎである。
ボルダー市ではいくつかのグループが、Y2K で起こりえるだろう危機に向けて、さまざまな準備をした。

Y2K では、情報そのものが信頼に足らなかったからか、何も起らず無事に世紀を越せた。ところがピークオイルは、どう楽観的に見ても「ガセネタ」として頭のすみに追いやることはできそうもない。
石油生産が需要に追いつかない日が、遠からず必ずやってくる。
怒ろうが嘆こうが、「待ったなし」なのだ。
石油中毒に冒されているわたしたち現代人は、そろそろ脱石油のリハビリに励む時期に来ているのかもしれない。

今回、飛行機のガソリン代を節約するため、ビデオで講演に参加したピークオイル研究の第一人者、リチャード・ハインバーグは、「産出量がピークを迎えるのは石油だけではない。石油ピークの10年後に天然ガスも生産の峠を越え、ウランは2050年前後に、石炭もまたそれに続いてピークを迎える」と語った。

ベストセラーになったハインバーグの著作の題名は『パーティーは終わった』だ。
この数十年間、わたしたちは石油をガブ飲みしながら大いに近代文明というパーティーを楽しんだ。
だが永遠に続く祝宴はなく、いまパーティーは終わろうとしている。
ニューヨーカー誌によると、クリントン前大統領はこの本のあちこちに線を引きながら熱心に読んだそうだ。ハインバーグの最新刊は、その名も『ピーク・エブリシング』(すべてがピークを迎える時代だ。
いま出版社にオーダーしているので、読んだらまたそのハイラ イトを紹介したい。

シカゴ・ピークオイルという組織の創設者、ケヴィン・ウォルシュは、「ピークオイル、脅かさない伝え方」という演題でスピーチをした。
石油生産が峠を越しても、それはハルマゲドンや「この世の終わり」ではない、と彼は説く。
大事なのは友人や隣近所の人たちに、怒らせたり怖がらせることなくピークオイルの現実を伝え、いっしょに準備に取りかかることだという。
シカゴ・ピークオイルは、すでに大都会の空き地に共同の野菜畑を作ったり、緊急時における助け合いのネットワークを築いている。
石油ピーク時代へのベストな対策は二つ。
燃料消費の節約と、ローカルに食物を生産することだという。

けっきょく、そう遠くない未来に、険しいでこぼこ道が待ち受けていることは確かなようだ。
石油が枯渇への下り坂を転がり始めるとき、わたしたちは平和と秩序を維持できるだろうか? 
その変化がもたらすものが混乱と暴力にならないよう願うばかりだ。
友よ、なんという時代をわたしたちは共に生きているのだろう。

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