半農半菓
電気の畑
2006年4月7日
「ついたーー!!」
部屋の明かりが灯ります。
平成17年12月、我が家の畑の作物に「電気」が加わった瞬間でした。
水力発電が完成したのです。
構想から3年、着工から1年!
(ま、つめてやれば、1〜2週間でできてたかも、なんせ合間合間の作業だったからね)

電力会社からの線から、我が家が切り離された瞬間、なんだか不思議な感覚に包まれました。
なにか体から、重たいものがすうっと消えていったのです。
それは、戦争、放射能、環境問題など、私たちの今を成り立たせるために目をつぶっているエネルギーにまつわるいろんな問題から開放された瞬間だったからかもしれません。
そう、電線によって、発電所から家まで、まさに物理的につながっていることに、そのとき改めて気がつきました。

今や電気は私たちの暮らしになくてはならないもの。
しかし、日本の電力消費は、過去40年間で10倍増加。
今ではエネルギー自給率6%と、世界最低になってしまいました。異常な数値です。
ひとたび石油がストップすれば、100日で備蓄はなくなり、電気、水道、交通、食糧のライフラインはほとんどストップします。
また日本の電力のうち、ほとんどは火力発電と原子力発電。
石油や原子力でお湯を沸かし、その蒸気の力でプロペラを回して電気をつくりますが、ほとんどは熱として捨てられ、送電線で遠くへ運ばれる間にもロスが生まれます。
結局、家庭に届くのは35%だけで、残りの65%は熱として捨てられていること、ご存知でしょうか。
しかも原発には、放射能のゴミ問題と、事故とテロの不安がつきまといます。
ウラン鉱山で働く先住民族の放射能被爆や、石油のための戦争、温暖化・・・・。
私たちの便利さの裏にある電気の実情を知るにつれ、自然や誰かの犠牲や無駄の上に成り立つ便利さが、不快なものになってきました。
かといって、不便はしたくないし。

最初はビデオなどの待機電力をカットすることから始まりました。
そして、必要のないもの、取り替えれるもの、家の構造、生活のあり方など見直した結果、今では電気代は月々1500円程度。でも普通に冷蔵庫、洗濯機、オーブン、パソコン、・・・自由に使って不便はありません。

さらに残りの電気も自給できればいいなと、目をつけたのが、横に流れる小さな沢。
水力発電ができないか調べてみたら、こんなちょろちょろの水の量でも、我が家の電気は十分まかなえそうなことが判明。
ここも昔は、木の水車が回っていたとは近所の人の談。
水はちょろちょろなんですが、なにせ山あい。
落差が取れます。
太陽光発電は雨の日や、夜は発電しませんし、風車は風があるときしか、回りません。
しかしその点、水力発電は、24時間365日発電するし、コストも太陽光ほどかからないとなれば、水があれば利用しない手はありません。

車の発電機(ダイナモ)の先にスプーンがたくさんついた形の簡単な水車。
そして落差をとるために、太さ70ミリのパイプを200メートルひきました。
我が家の場合、水量平均1.5リットル/秒で落差40メートル。
この水量でだいたい100ワットを発電中。
100ワットといっても侮るなかれ。
24時間で2400ワットの電気が作られるわけです。
これでどのくらいの生活が可能かというと、
冷蔵庫、洗濯機、照明、炊飯器、パソコン、携帯充電・・・我が家にとって生活に(最低限?)必要な電気が自給できるようになりました。
見直してみると、意外となくても困らなかったり、他のものや工夫で事足りるモノって、意外と多いんです。
技術の進歩で、冷蔵庫の消費電力は10年前の10分の1に、照明も5分の1に。
そんな省エネ機器と、工夫と、生活の見直し、そしてお日さま、水、風・・・・といったそこにあるエネルギーでの暮らし。
なにも生活の質を落とさなくても、持続可能な社会は築ける!と僕は思います。

食べ物もエネルギーも、輸入したり、依存したりしている限り、そこにほんとうの安心はありません。
デンマークは20年かけて、自給率5%から100%まで回復したことを考えると、本気になれば可能です。
個人と地域の、本当の意味での自立。
それはとっても心地いい暮らしです。

よく考えると、ここらはおもしろい地域です。
上関の原発予定地を見下ろすかのようにそびえ立つ大星山の風車。
原子力か、自然エネルギーか。
どんな未来を選ぶのか、今、問いかけられている場所・・・。
あなたなら、どんな未来を選びたいですか?

先日久しぶりにまとまった雨が降りました。
家中の照明と電気製品をつけてみても、余るほど、発電していましたよ。
余った電気は捨てるだけなので、なんだかもったいない気がして、充電式乾電池の充電器やらコンセントに挿しまくったりしてしまう僕。
暖房便座を一日中最高温度で使える妻は、うれしそうでした。


設計・施工協力
グローイング・ピース http://growing-peace.com/
参考HP
グリーン・ポスト http://www.greenpost.jp/

ページアップ