半農半菓
生きる値段
2006年11月10日
人が生きるのに、ほんとうに必要なものって何だろう。
水、空気、食べ物、大地、・・・。
誰に聞いても、同じ答えだと思う。
ま、僕の場合、週に一度はお好み焼きを食べないと・・・。
けど、今の日本を生きる私たちには、ここにもうひとつ、「お金」という項目が入ってくる。

ここらの田舎の4人家族の一月の標準的な支出を考えてみる。
家賃または家のローン 6万円。
電気代1万円。
ガス代5千円。
水道代2千円。
し尿処理代5千円
電話代1万円。
税金 1万円。
車1台の維持費 3万円
保険料 2万円。
年金 3万円。
食費 5万円。
教育費 ?円。

20万円?30万円?
とにかくこれだけのお金を稼いで初めて日本でいう普通の生活が成り立つ。
そしてそのためには、男性は夜遅くまで働き、女性は家事、子育て、そしてパートに追われる日々。
ストレスと時間に追われる大人たちの社会。
「だって、しょうがないじゃない」といってるうちに、生きるのに一番必要なものたちが失われそうになっている。

僕の知ってるアフリカのある社会では、生きるのに必要なお金はゼロだった。
家も食べ物も自分たちでつくる生活。
エアコンもファミコンもないけど、キレル子も引きこもりもいない。
年金も保険もないけど、老後の不安もない。
そこにはゆったりとした時間が流れ、笑顔と笑い声が響きあう。
そして何よりも、子どもたちや若者の目は輝いていた。
かの国を思い出すたびに、思う。
いったい私たちは、なにをしてるんだろう・・・。

日本に戻って、そんな日本のシステムに取り込まれないよう、自給的かつ快適といえる
生活を目指して、今のスタイルになった。
そんな我が家(5人家族)の一月の標準的な支出を紹介しよう。
家賃 0円。
電気代 236〜1000円。
ガス代 4千円。
水道代 0円。
し尿処理代 0円
電話代 6〜7000円。
税金 1万円。
健康保険料 1万円
年金 3万円
食費 3〜5万円。
学費など 1万円。

ざっと10万円くらいかな。
米は売るほど作ってるし、ほとんどの野菜は母がつくっているし、魚もよく人からいただくから、それだけで食費にほとんどかけなくても1カ月の食を楽しむこともできるのだが、週に一度はお好み焼きを食べたいし、家族で外食もときどきしたいし、食費はけっこう惜しまず使う。
そしてタダだけど、とびきりうまい我が家の井戸水。
かつて街の造り酒屋が汲みに来ていたと聞く。
7反(2100坪)の田畑と3軒の家屋にかかる固定資産税は、年間8千円!
街中だったら、いったいいくらになることか。
田舎はいい。
結局、年金、健康保険、といった税金みたいなものにお金がかかるだけで、こんな暮らしを選択する限り、それ以外のお金はそれほどかからない。

そして、もしもたくさんの人がこのようなライフスタイルを選択しだすと、どういうことが起こり始めるか。
身体と心がバランスを取り戻すと、病院、薬局に行く割合は激減するだろう。
家族やコミュニティがつながりを取り戻すと、老後の不安は消え去り、年金というシステムはその必要性を失い始める。
(どのみち、すでに破綻してるけど・・・・)
それはつまるところ、支出から年金と健康保険が消えていくということ。
余裕の出た財政を、本当に必要な社会福祉、教育にもっともっとまわせばいい。
そうすると今度は、少なくとも保育費や義務教育期間の学費はかからなくなることだろう。
そんな目線でもう一度我が家の支出を見つめれば、生活にそんなにお金がかからない社会も想像しやすいのではなかろうか。
そして、想像できることは、創造できるのだ!!

その社会では、人の働く時間は、半分になる。
その分、仕事の機会は増え、失業者という言葉は過去の遺物になるだろう。
なくなる業種もたくさんあるだろうが、福祉や教育、サービスといった分野に仕事のシフトが起こる。
生活にかかる費用が激減すれば、給料は安くても成り立ち、企業の人件費コストは大幅に減り、すべてのものの値段は、格段に安くなる。

そのようにして「生きる値段」は、今とは比べものにならないほど安くなる。
そのとき私たちはきっと、豊かな「時」と目の輝きを取り戻しているに違いない。
この海の向こうの、あの子たちのように。

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