半農半菓
シェアリング
2006年11月10日
「豊か」ってどんなこと?
人によってそれぞれだろうけど、僕にとって「豊か」とは、
「したいときにしたいことができる状態」ってところかな。
したいときにしたいことができる時間。
したいときにしたいことができるお金、もの。
したいときにしたいことがいっしょにできる人、家族、仲間。
・ ・・

お金も必要だけど、そのお金を稼ぐために自由な時間がなくなってしまうのは、「豊か」とは思えない。
逆に自由な時間がいくらあったって、何かをするのに必要なお金や物がなかったら、「豊か」とは思えない。
そしてお金も時間もあったって、歓びを分かち合える人がいなかったら、やっぱり「豊か」とは思えない。
だけど見渡せば、仕事が急がしすぎてゆっくり時間を楽しむひまもない人がいる一方で、仕事がない、お金が足らずに困る人もいる。
モノに囲まれてはいるが、お金も時間もゆとりのない人たちもいれば、世界の3分の2はいまだそんなモノとは無縁の生活をしている。
ちょうどいいお金、モノ、ちょうどいい時間があれば、たぶん人は「豊か」だと感じるのではなかろうか。

さて、ちょうどいい辺ってのは、どこらへんなんだろう。
仕事の時間を半分にしてみる。
空いた時間で、好きなことをする。
子どもと遊べば、自分も子どもも楽しいし、妻も自由な時間ができたと喜ぶ。
米や野菜を育てれば、収穫の歓びとともに、食べるものには事欠かない。
仕事を半分にすることで、時間は十分にあるようになる。
さて問題は、仕事を半分にすることで、お金も半分になることだ。
だけど、お金はその人にとって充分にあるのなら、まったく問題ない。
月に10万円あれば充分な人もいれば、50万円あっても足りない人もいる。
お金はなぜ要るかといえば、多くの場合、モノを買うためだ。
だから、モノをそんなにたくさん買う必要がなければ、必要なお金も少なくてすむ。
すると働く時間が少なくてすむから、その分人は自由を手に入れる。
そんな方法はないだろうか。

よく考えてみると、モノの中には、一日のうち、わずかしか使われないものもけっこうある。
それならば、モノを買わなくても、「必要なときに必要なだけ使う」ことができればいいのではないだろうか。
そんな発想から生まれた「シェアリング」。
一日のうちほとんどを使われずに眠っているモノがあったとして、もしもいくつかの家族で共有したらどうなるだろう。

「明日の神」というベストセラー本に、シェアリングに関するおもしろいアイデアが書いてある。
そこでは、掃除機を例に考えてある。
掃除をするのに、掃除機が本当に必要なのかという議論は、ここでは横に置いておく。
使う家でも1日1時間。
それ以外は、部屋の片隅で眠っている掃除機。
それなら、近所に住む4家族が共同で1台の掃除機を使うようにしたら、どうなるだろう。
4つの家は、前より汚くなるだろうか?
そんなことはないだろう。
時間帯を変えて使えば、何も問題は起こらない。
そして掃除機にかけるコストは、4分の1になる!
10の家族でシェアリングすれば、10分の1に!
さらに、もっと興味深い事実がある。
現在、世界の3分の2の人びとは、掃除機など、およそそんなモノとは無縁の生活をしている。
もし世界中の人が、近所の数世帯ずつとモノをシェアリングすれば、
もうこれ以上1台もモノをつくらなくても、今あるモノだけで、世界中の全員が、先進国と同じ暮らし方ができる!!

目からうろことはこのこと!
あったら便利だけど、稼働時間の短いもの。
洗濯機も、車も、日曜大工の道具たちも、農機具も。
シェアリングできるものなんて、たくさんある。
そう、誰もが幸せに便利に暮らすために必要なものは、すでに充分ある。
モノを「所有」することから、「利用」する発想へ。
「わが家にとって最善」という経済から、「すべての人にとって最善」の経済に変えるだけだ。
もちろん経済はゼロ成長どころか、超マイナス成長だろう。
だけど、生活に必要なお金は減り、人は自由な時間を取り戻す。
もちろん、今と便利さは変わらずに。
豊かさへの近道とは、経済を拡大させることではなく、むしろ縮小させることだったと気付く。
必要だったのは、分かち合うという意識。

ちなみにうちでは、3家族で5台の車を共有する。
3台の軽自動車と、軽トラ1台、8人乗りワゴン1台。
遠くに3世代で出かけるときは、8人乗り。
農作業やいろいろ運ぶときは、軽トラがやっぱり便利。

それから、仕事のシェアリング。
ケーキ屋というのは、実は非常に季節変動の激しい業種で、夏と冬の売上げは、倍ほど違う。
当然仕事量も倍ほど違うわけで、夏、ちょうどいいスタッフ人数だと、冬から春、明けても暮れても仕事に追われることになる。
うちの店では、基本的にみんな半日仕事に関われば、店は機能するようになっている。
フルワークならば5人でいいところを、10人でまわす。
春冬の忙しいとき、誰かが長期旅行で抜けるとき、急な大量注文のとき、
普通なら、誰かにしわ寄せがいって、誰かが無理をしなけりゃならないだろうが、
うちは、みんな余裕があるから、誰かが無理せず、補い合える。
誰かの役に立つというのは、無理さえしてなければ、誰にとっても素直にうれしいもの。
こうして、喜びは循環する。
「豊か」だなあと思う。

ワークシェアリング、カーシェアリング、・・・。
シェアリングという言葉をだんだん聞き始めた昨今。
少しずつ少しずつ、変化は始まっている。

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