そりつくり
2017年2月25日
「よっしゃーーーー!!!」
Kが、心の底からの雄たけびのような声とともに右拳を高くつきあげた。 ここ1週間、黙々と作ってきたそりの試乗が大成功したからだ。 2月広島のもみの木森林公園に雪遊びに行くことになって、そりやスキー、かんじきを作ろうと何人かがやる気になった。 それから1週間、ほかの子のプランに惑わされず、毎日黙々とそりつくりに熱中していたかいせい。 ほかの子もときどき一緒にやってたけど、Kだけは毎日一人ででもずっと作り続けていた。 竹を切って、火で曲げて、やすりで削って、・・・。 わからないところをときどき大人に聞いては。 放課後もひとり縁側でそりの裏側に紙やすりをかけてるKの姿があった。 人の好さもあって、自分の意見や考えよりも誰かのプランに乗って動くことの多かった彼だが、今回はくっきりしていた。 寝てもさめてもそりのことを考えてる顔。 ただ黙々となにかに打ち込む姿は美しい。 「完成したら、街のそりすべり場に試験運転しに連れてっちゃる」 その約束どおり、試乗会に来たこの日。 いざ、そりすべり場の一番上で、そりに乗り込んだKだけど、 高さと怖さもあってか、なかなかなかなか滑り出せない。 うまくいくかなあ、大丈夫かなあ、ひとりごとのようなつぶやきが聞こえてくる。 「大丈夫、自信もっていってみい!」背中を押した。 Kを乗せたそりは、ぐんぐんスピードを増して、安定感たっぷりに滑り降り、止まった。 そして、雄たけびとともに右手を突き上げる姿。 百メートルはあるその坂をうれしそうに駆け上がってくる。 「大成功じゃあ!!」 一緒に来た二人も興奮が抑えきれない様子。 それからは、何度も何度も交代で。 プラスチックのそりと競争してみると、ぶっちぎりの速さ。 一人で乗った距離と二人で乗った距離、三人で乗った距離を比べてみたり。 (もちろん三人乗りがいちばんでした) 意気揚々とてらこやへ凱旋帰国。 以来、彼の中に凛とした意志の強さを感じることが多くなった。 その日味わったとてつもない達成感と感動、そして失敗を恐れる心を乗り越えたことが、彼の中のなにかを変えたみたい。 学校はじめてよかったなあと思える瞬間(^^) その日は、家でもそりの話をえんえんとうれしそうにする彼の姿があったそう。 |