高く買って安く売る
2008年4月5日
20代の頃、影響を受けた人がよく言ってたこと。
「商売は高く買って安く売れ」 ????? なるべく安く買ってなるべく高く売って自分の利益ばかり考えてた僕には理解できない考え方。 そんなん、成り立たんじゃん。 でも、 なるべく問屋からは高く買って、問屋を立たせ、 なるべくお客さんには安く売って、お客さんを立たせ、 自分の利をなるべく少なくする所に、自分の立つ道ができる、 という説明になんか納得。 でもその人に影響を受けたという人たちの中にも、それを実際に実行する人は僕の近辺にはいなかった。 当時僕はよく批判してたもんだ。 「言うこととやることが違う」って。 あるとき気がついた。 人を批判するより、自分がすればいいんだ、と。 自分がそれを実践して、いつか証明してやる! 血の気の多い20代、そう意気込んでいたのを思い出す。 そして8年前、店を受け継いでからは、「高く買って安く売る」これがうちの基本方針だ。 成り立たなかったか? いいえ、見事に成り立ちました。 成り立つどころか、それによって、今のうちの店の信頼がある。 うちの材料の仕入れ値を他のケーキ屋さんが知ったら、きっと驚くと思う。 卵がキロ600円、一個50円くらいかな。 木次の牛乳1リットル 330円。 オーガニックバナナ4本で400円くらい。 アーモンドは普通キロ800円くらいのところ、オーガニックのものだとキロ2200円。 それでもケーキは240円から300円台に抑えている。 ほとんどのケーキ屋よりも安いはずだ。 たぶん普通のケーキ屋では、この材料でこの値段は無理。 かといって、スタッフをただ働きさせてるわけでもなく、 満足してもらえる対価は払えてると思う。 それじゃ、経営者の僕が無理を? もちろん、税金を何十万円も払うほど、利益があるわけでもないが、 無理してるわけでもなく、 必要に足るだけのお金も物も時間も、十分にある。 これも実は、「意識的に生きる」で明かしてるような魔法を使ってるから、 絶妙なバランスで成り立ってるんだけど、ね。 それはまたいつか別の機会に。 「高く買う」には、意味が二つある。 一つは、高くても良い材料、本物の材料を使うという意味での「高く買う」。 もう一つは、問屋や農家から、なるべく高い値段で買わせてもらうという意味での「高く買う」。 たとえば、イチゴ。 ちょっと傷が入ったり、ちょっと形が悪いと市場では買いたたかれて、がくっと値段が下がる。 だけど農家さんからしたら、おんなじ愛情かけて育ったイチゴ。 どんなに市場で3級のレッテルをつけられてしまう形だとしても、 うちはそれを1級の値段と同じ値段で買う。 あるいは農家さんが市場には出せないほどの形のものも、ムースなんかどうせミキサーにかけるんだから、やっぱり同じ値段で買い取らせてもらってる。 普通は買いたたくだろうけど。 日頃そんな形で農家さんがやっていきやすいように、つきあわせていただいてるので、 逆にクリスマスや急な注文でこちらが足りずに困ってるときは、最優先でいつもなんとかしてくれる。 だからこれだけこだわった苺を使ってても、その確保に困ったことがない。 そんな感じで高く買って問屋を立たせ、 なるべく安く売ってお客さんを立たせ、 利益はなるべくスタッフや社会に還元して、 自分の利を最大限に少なくする。 そんな感じでやってきたら、いつのまにか お金も物も人も時間も、 すべてが十分になってきた。 ありがたいなあと、心から思う。 「高く買って安く売る」 そこには商いの一つの理があるようだ。 |