転ばぬ先の杖
2008年6月12日
タウン情報誌「ぶち」への今月の原稿より転載
今から15年ほど前、1993年の凶作による米騒動を覚えているだろうか。 日照不足と長雨による、全国的な大凶作。 米屋の店頭から米が消えた。 当時はタイ、中国、アメリカから輸入することによって急場を凌げたが、世界の米事情は当時とはすっかり変わってきてしまっている。 世界最大の米の輸出国として、前回の米不足を救ってくれたタイでは今、米不足が問題となっており、市民の間で米騒動が発生する事態になってきている。 ベトナムやインドなど主要な米の産地である東南アジア各地でも同じ。 また中国においては、干ばつや洪水による影響で、収穫量は減少傾向にある一方、米の使用量は年々増加してきており、もはや輸出に振り向ける余裕は少なくなってきているのが現状。 こうしてみてくると、タイや中国から前回のように輸入を受けることは、ままならなくなってきている。 仮に輸入が出来たとしても、その量は制限され、価格は93年当時の3倍、4倍に 上昇する可能性が大きい。 現に、すでに国際的な米の価格はこの1年で70%上昇している。 となると、もしもここ数年の間に我が国で、異常気象の発生によって米の生産が極端に減少するような事態が発生し、そんな状況が2〜3年続くようなことになったら、国産米は言うに及ばず、15年前に毛嫌いした輸入米さえ高騰し、 ひょっとすると、すべての米の姿が米屋の店頭から消えることさえあり得る。 「頻発する異常気象」と「原油高」。 世界は深刻な食糧危機の時代に入ろうとしている。 「食料自給率30%」のこの国が、世界中から食べ物を安く買えた時代は、もう終わる。 食べ物の値段が急騰しても、エネルギー価格が高騰しても、そんなに関係なく暮らせる方法が一つだけある。 食べ物をつくる力を、自分たちの手に取り戻すこと。 なるべくそこにあるエネルギーを使って。 幸い、ここらはまだ田んぼも自然もそこそこに残っている。 家庭菜園を始めよう。 できることなら、お米つくりも始めよう。 お米作りも、プロの半分できればいいやってくらいなら、そんなに難しいことじゃない。 家庭菜園感覚で、やったらいい。 家族と、親族と、仲間と一緒にやれば、そんなに大変じゃない。 道具も機械も、みんなでシェアすればいい。 自分で作れなくても、作ってる人とのつながりをつくればいい。 そしてすでにつくってる人は、石油が使えなくなってもやっていけるやり方を常に考えておこう。 地域で自給できるエネルギー、肥料、やり方、つながり。 できることから、始めよう。 やり方なんてたくさんある。 備えあれば、憂いなし。 どんな時代になっても、生きるのに最低限必要なものは十分にある、という安心感。 日々のベースに、その安心感があるのと、不況になったらどうしようという不安があるのとでは、その差は大きい。 なんでもお金に換算する世界から、抜け出そう。 せめて、生きるのに最低限必要なものくらい。 お金に換算しなければ、効率を考えなければ、つくること、育てること、大変だけどこんなに楽しい世界はない。 原油高、穀物高騰、それは本当の豊かさを思い出す、いいきっかけかもしれません。 |